こんにちは。
弱小文化財応援ブログ「おらがまち」まちこです。
大きなお寺に行くと、大体立派な五重塔や三重塔が建っています。
とっても立派で、これがお寺のメインと思うほど。
だからこの塔、おもしろい見どころがたくさんあるんです。
構造はもちろん、種類は思っている以上にあり、その役割も実は!
それでは早速マニアックな世界へ行ってみましょう!
五重塔の歴史
五重塔は正式には「仏塔(ぶっとう)」と呼ばれます。
「仏塔」は寺院建築の一つで、五重塔だけでなく三重塔など階層が違うものも含め「仏舎利(ぶっしゃり)」を納める塔全ての総称になります。
中国から仏教が伝来して来るのと一緒に日本にやって来た建築です。
その起源は、仏教発祥のインド。
釈迦のお墓が起源
インドでは「ストゥーパ」と呼ばれる、釈迦の舎利を納めるものが作られていました。
「釈迦(しゃか)」はもちろん、仏教を起こしたあの釈迦。
「舎利(しゃり)」は、釈迦の骨。
つまり、釈迦の骨を入れておくお墓ってことになります。
塚のようなものであったといわれています。
これがやがてシルクロードを経て、中国に仏教が伝来すると大型化し、楼閣(階層のある建築物)がそれに当てられるようになります。
中国でなぜ大型化したのかというと、「墓」と訳さず「塔」と訳したため。
一般人の墳墓(ふんぼ)のようなものでは、釈迦の偉大さは伝わらない、これをそれと同義にするべきではないと、仏教の弟子たちが思ったためとされています。
そのため、伝来当初こそ粘土製の背の高い建築物に似せたものでしたが、漢の時代*1に入ると木造の建築技術が飛躍的に発展。
中国ならではの大きくスケールの大きい塔へとなっていきました。
中国での「仏塔」の特徴は、内部に階段が設けられ実際に人が上ることが出来るということ。
すごい!
仏塔は、外敵の侵入を監視するための場所として、高台として活用されていたためといわれています。
日本での仏塔の役割は、あくまでお寺の仏舎利を納める場所で、神聖な場所でしたので、人が入ってどうこうというものではありませんでした。
ちなみに朝鮮半島を経由してやってきたので、韓国にも仏塔がありました。
石塔などは比較的多く残されていますが、木塔は現在唯一1基残されている俗離山法住寺の五重塔だけです。
400年前のもの。
比較的新しい建築技術で建てられ、仏教伝来当初の形ではないようです。
心柱があることなどから、日本の五重塔とよく似た構造をしていますが、階層ごとに幅が減って行き、上に向かって△三角形のかたちをしています。
※日本も上部に向かって幅が減少しますが、大きく減らさないのが特徴。
お寺の中で一番大事
ところで、お寺の中で一番大事な建物ってなんでしょう。
本尊の仏像が納められている本堂?
それとも大事な経典が保管されている経蔵?
いやいや、実は一番大事なのは「仏塔」なんです。
なんせ、仏教を起こした釈迦の骨が納められているところ。
だから、初期のころはこの仏塔を中心に寺院建築は配置されていました。
寺院建築は「七堂伽藍(しちどうがらん)」といって、作られる建物の内容は大体きまっています。
- 塔・・・仏塔、五重塔など
- 金堂(中堂・本堂・仏殿)・・・本尊が安置されている堂
- 講堂(法堂)・・・お坊さんが修行するところ
- 鐘楼・・・鐘つき堂
- 経蔵・・・経典を保管しておくところ
- 僧房・・・お坊さんが生活するところ
- 食堂・・・お坊さんが生活するところ、とくに食事
の以上7つが基本。
現存こそしていませんが、奈良県飛鳥寺の建築当初の伽藍配置が日本の初期のものであるとされています。
↓ これがその配置図
仏塔が中心であったことがよくわかる配置ですよね。
それだけ、塔は大事な建物だったわけです。
仏塔の種類
そんなこんなで、日本に仏教と共にやってきた仏塔。
日本にやってきて、はたまた独自の展開をしていきます。
日本の仏塔の最大の特徴は、中心に心柱があるということ。
中国の仏塔にはこの形はありませんでした。
※韓国では現存する木塔が1基しかなく、これに関しては推測の域を出ることができない
これは日本の神道の神社建築においても存在するもので、神社の本殿の中で最も大事とされている柱をやはり「心御柱(しんのみはしら)」といって、とても大事にしていました。
日本の神様は「柱(はしら)」として数えます。
それほど重要な役目を担っていた部分なわけです。
日本にやってきた仏塔もこうした神道の影響を受け、「心柱」が出来たのではないかととされています。
はたまた構造上、一本柱を通したなどなど。
この辺もどういった経緯で設置されたのか、研究途上なので、はっきりしたことは断言できません。
しかし、なんでもごっちゃにいいとこどりをする日本ならではの建築展開ではないかなと思うと、大変興味深いですよね。
そして日本で仏塔は大きく2種類にわけることができます。
わたしたちがよく見る五重塔や三重塔など、階層が複数ある「多重塔(たじゅうのとう)」と、二層で上下の連結部に亀腹と呼ばれる白い漆喰の層を持つ「多宝塔(たほうとう)」です。
多重塔
5重、3重に層を持っている仏塔で、階層ごとに内部に空間を持っている塔をいいます。
わたしたがお寺でよくみるのはこの「多重塔」がほとんど。
現在は五重塔や三重塔などが多いですが、古代・中世には七重塔や九重塔なども建設されていました。
また、この多重塔の中には、内部に空間を持たない特殊な塔もあります。
簡単にいうちょっと太い棒に屋根の飾りがついたようなもので、「簷塔(えんとう)」といいます。
あんまりないのですが、代表的なのは談山神社十三重塔とか。
細かく言うと内部に空間のある五重塔や三重塔のことは「層塔(そうとう)」ともいいます。
現存する多重の塔で、木造五重塔としては法隆寺のものが世界最古。
国宝指定です。
多宝塔
仏塔ではあるのですが、日本独自に発展してきたのがこちらの「多宝塔(たほうとう)」。
平安時代の密教、とくに空海が考案したといわれています。
なので、真言系の寺院に多く見ることができます。
空海の時代の多宝塔は残っていませんが、和歌山県岩出市の根来寺の多宝塔がその当時の様式を良く残しているそうです。
日本最大級で国宝に指定されています。
※日本最古の多宝塔、金剛寺(大阪府河野長野市)の多宝塔(重要文化財)は平安末の作成だが、江戸初期に大改修が行われてる。
ちなみに、まちこの地元にも重要文化財に指定されている多宝塔があります。
です。
見に来てね!
地震に強いから、スカイツリーの見本になった~まとめ~
日本の五重塔って結構色々なところで残っています。
これだけの地震大国で、あれだけの高層木造建築が破壊されないってすごいことだと思いませんか?
大きな地震が各地で起きても、「〇〇寺の五重塔が倒壊してしまいました!」なんてニュースを聞いたこと、まずないですよね。
これは昔も同じ。
ではなんであんまり塔ってないのかって?
それは火事で焼失してしまうことが多かったからです。
例えば戦争などの、戦(いくさ)。
そして一番多いのは、落雷。
背が高いがゆえの、逃れようのない部分です。
しかし、日本の仏塔は「地震」に対して、耐震・免震等々色々な面で大変大変大変!すぐれているんです。
心柱もその役目を担っているとか、組物のおかげとか、それはもう色んな理由があるのですが、 とにかく地震大国ならでは様々な工夫が施されています。
本瓦という屋根の構造を持つのもちゃんと理由がある。
だから、この仏塔の構造を真似をして、スカイツリーは作られました。
よくよく構造図見てみると「心柱」という部分が!
これに現代の技術を合わせてあの形になったんです。
昔の人の技術がいかにすごいかわかりますよね。
五重塔や三重塔などの高層の建物は、見た目はもちろんですが、こうした内部の構造にものすごい技術が注ぎ込まれています。
それを知りながら、改めて見ると感慨深いものがあると思います。
五重塔みなくてもスカイツリーを見ることはあるって方。
古代の技術の知恵の塊です。
昔の人はすごかったんです。
お寺に行ったときに五重塔をみたら、外身だけでなく中の構造にも思いを馳せてみて下さい。
以上「おらがまち」まちこでした。
≪ 参考文献 ≫
・ふるさと納税で文化財を守る。弱小文化財を守る一石三鳥の利用の仕方
・パワースポットや世界遺産を楽しむ旅!クラブツーリズムの中国・四国旅行(広告)
・日本建築とは?お寺や神社・お城の旅にでるなら知っておきたい基礎知識。
・木造住宅特有の隙間風や瓦屋根。日本建築の知恵をフル活用してみる。
・家づくりで損しないために【持ち家計画】 (広告)
*1:超余談ですが、中国の歴代の国を覚えるのはとっても大変。わたしが教わったのは「もしもし亀よ」で覚えるという方法。♪~「いんしゅうしんかんさんごくしん、なんぼくちょうずいとうごだい、そうげんみんしんちゅうかみんこく、ちゅうかじんみんきょうわこく:殷周秦漢三国晋、南北朝隋唐五代、宋元明清中華民国、中華人民共和国」。間に細々入ったり、三国や五代の国を覚えなきゃいけないとかありますが、大変便利に活用できます。おすすめの暗記方法