こんにちは。
弱小文化財応援ブログ「おらがまち」まちこです。
最近、池の水を抜いて外来魚を駆除したりする面白いテレビ番組があります。
結構出演者のマニアックなネタがあり、お城の堀や寺社の池などで作業が行われると、瓦やたくさんの遺構が出てきます。
わたしはまがりなりにも知識が多少あるので見ていてすごく面白いのですが、知らないと何にそんなに興奮しているの?と思ってしまう。
そこで今回はあの番組に限らず、お寺や神社に行くとその辺に転がっていたりする「瓦」についてご紹介したいと思います。
それでは早速マニアックな世界へ!
瓦の歴史
瓦は日本人からするとごくごく一般的で、最近の家屋にも使われています。
諸外国でも瓦は煉瓦などがあったり、とってもポピュラー。
随分見慣れたはずの「瓦」ですが、今目にしている瓦は寺社などに使用されているものとはちょっと違います。
江戸時代に入って主流となってきた瓦に「桟瓦(さんかわら)」という瓦があります。
わたしたちが今、住宅などで使用している瓦はこれがほとんどです。
しかし、本来は瓦といえば「本瓦(ほんがわら)」。
古い寺社建築で見かける瓦は、ほぼこれです。
中国・朝鮮から仏教伝来とともにやってきた瓦は、当初は寺院のみで設置することが許されていました。
現存している日本の最古の瓦は、元興寺の飛鳥時代のものです。
ここは写真でももちろん、直に見ても明らかに当時の瓦とその後修復で設置された瓦の区別がつきます。
今の様な光沢や一律同じ色形ではなく、いかにも土で作った感と微妙~な歪みが何ともいえません。
マニアックですみません。
元興寺の写真を見たい方は公式サイトへ!
瓦職人の腕
現在瓦はほとんど機械によって製造されていますが、昔はもちろんそんなことは出来ません。
一枚一枚瓦職人が手作りします。
そのため歪みや割れなどが生じてしまい、実際に設置されている瓦数よりもかなりの数を作っています。
このねじれなどを微調整しながら瓦を葺いていくのも技術だし、なるべくこのねじれや割れなどを出さないのも職人さんの力。
これだけでも大変なのですが、瓦で一番重要視されているのは材料となる「土」=「粘土」といわれています。
この土探しも最近は大変なんだとか。
今でもこうした古代の瓦を製造するには、職人さんの技術が必要です。
それでもやっぱりどこの業界も同じですが、なり手不足も深刻。
木材も切った後、乾燥させた後、加工した後で、形に歪みが生じます。
宮大工さんはこうした木の性質を見分けながら、建物を建てて行きます。
瓦職人さんも基本これと同じです。
しかし、木材のように自然に育った資材を使用するわけではなく、「瓦」という既製品を自分で作り上げていく、という作業が必要になります。
上手く出来なければ使用できない、最悪廃棄となります。
もはや己の力量と運との戦いです。
そんな瓦職人は、宮大工からも一目置かれる存在なんだそうです。
建築構造上の役目は雨除けと・・・
本瓦葺きの屋根
瓦は針金でとめたりするのが主流ですが、固定・安定させるために昔は瓦の下に土を敷くのが普通でした。
土を敷くことで雨漏りや瓦を屋根に落ち着かせる効果があるのですが、 これを現在の家屋にやってしまうと屋根の重みに耐えかねてつぶれてしまいます。
今の住宅は屋根を軽く軽くという傾向がありますが、現代建築にあった耐震や免震のためのものです。
そのため古建築に見慣れた人だと、現在の屋根はとても軽く感じるようです。
瓦は、屋根として雨除けのための重要場部分です。
ですが、古建築にはそれともう一つ重要な役割があります。
それは免震・耐震の効果。
昔は重たいことがミソ。
屋根の重さで建物を安定させる方法をとっていたからです。
上からの重さで地震による建物の揺れを小さくしていたので、軽すぎると逆にダメだったんです。
屋根は軽いほうがいいというのは現在の考え方なんて、面白いですよね。
唐招提寺金堂の屋根の修復時の報告書によると、瓦の総数は約3万枚、総重量は諸々ふくめて400トン!(金堂を坪数に直すと120坪くらい、普通の20坪の一般現代家屋だと3トンくらいだから、×6としても!)
これだけの重さのものが乗っているのかと考えると、木で作った建物の柔軟性とか構造の凄さがわかります。
ちなみにこうした古建築の際の修復では、使える瓦はそのまま再度葺き替えられ、割れたものなどを新しく新調します。
なので、一枚一枚職人さんがチェックして選り分けているんです。
しかも分厚くてすごく重いんです。
これを何万枚も全部やるんですから、すごい。
装飾としての瓦
鬼瓦
瓦に家紋を入れたり、模様を入れたりと瓦もちゃんと装飾がされています。
鯱も瓦の仲間です。
鴟尾(しび)といわれる鯱の原型も瓦。
鬼瓦ももちろん。
瓦というと「屋根に設置する瓦」ととらわれがちですが、本来「瓦」は「粘土をある形にして焼いたもの」(ブリタニカより)という広い意味があります。
お寺の敷地の片隅に放置されていたりすることもありますし、瓦を再利用した土塀なんかもありますので、どんな瓦の破片が落ちているのかちらっと見てみると意外な発見があって面白いですよ。
ええ!こんなところに鬼瓦の鬼の目ん玉のとこがおちてた!ということもあるかもしれません。
ただし、どれもお寺やその土地の所有となりますので、破片だからいいやと勝手に持って帰るのはやめましょう。
古建築の瓦
一番端っこの軒丸と軒平
本瓦葺(ほんがわらぶき)
本瓦は「丸瓦(まるがわら)」と「平瓦(ひらがわら)」の2種類にわけることができます。
単純に丸い形をしている方が「丸瓦」、平べったいお皿の方を「平瓦」となります。
これにさらに最側面のもの(上記写真の部分)を「軒丸瓦(のきまるがわら)」「軒平瓦(のきひらがわら)」といいます。
よく家紋が入っていたり、唐草の装飾がされていたりするのはこの「軒」側の一番端の瓦。
某テレビ番組なんかに出てくるのは、この軒丸・軒平が多いですね。
端っこだから落下しやすいってのもありますし、装飾がされているので発掘や視認の際に確認しやすい瓦でもあります。
この「丸瓦」「平瓦」「軒丸瓦」「軒平瓦」を組み合わせて出来るのが「本瓦葺(ほんがわらぶき)」です。
特徴は、とにかくその見た目の重厚さ荘厳さです。
見るからに重たいのですが、丸と平が交互にある流線の美しさがなんともいえないものがあります。
昔は寺院のみで許されていたものでしたし、現在でも寺院建築において多く使用される瓦葺きの様式です。
もちろん個人的に家屋にされる方もいるかと思われますが、とにかく価格が高く!手間がかかる!ので、そういうお宅があったら「ああ、お金持ちだな~」なんて思います(笑)
もし日本伝統の木造建築の良さを取り入れたいなら、一部を使ってみる。
もしくは、現在に見合った技術に変化されたものを取り入れるのがいいかもしれません。
瓦の生産地
現在一般的な桟瓦
瓦の生産地で有名なのは「三州瓦」の愛知県。
現在の日本の瓦のシェア75%といわれています。
種類も豊富で、値段も手を出しやすく、大変長持ちするそうです。
新築のお家を建てる時に建築士さんやメーカーがおすすめするのもここの瓦です。
この他にも瓦の生産地は各地にあります。
どこのものも「耐久性が高く」「強度がある」「メンテナンス不要」であることから、最近は瓦葺きの家を建てる方も多いようです。
しかし、文化財の修復にしようするような古代の瓦の生産地になると数は激減します。
奈良県生駒市にこうした瓦の技術継承のために研修所を開いている業者がります。
こちらの業者さんは、文化庁の「選定保存技術」にも指定されています。
興味のある方はこちらのサイトをチェックしてみてくださいね。
伝統瓦の技術
瓦のまとめ
文化財の修復をする職人さんってのはどこの業界でも人手不足です。
もちろん、この瓦の世界でも同じです。
なんだ「瓦」かと思われる方もいると思いますが、古建築における瓦の重要性ってとても大きいものがあります。
瓦を葺くのももちろん、瓦を焼くにもしっかりとした技術と力が必要だからです。
上手く出来なければ、木造建築で出来ている日本の家屋は屋根から腐って行くことにもなりかねません。
大変重要な位置にある建築部材です。
そんな瓦も最近また人気が出てきたといえ、その流通量は圧倒的に少なくなっています。
わたしたちにとっても、すごく身近!すぐそこにあるもの!ではなくなってきていますよね。
現在は瓦を家屋にあまり使用しなくなったお家も多いので、鬼瓦などを庭先に置いて観賞用として利用していることもあります。
もっと小型のもので玄関に置いて邪気除けのお守りにしていたりもします。
↓ こんな感じにインテリア用にも応用されています。
瓦というと、家を建てる時など大々的な買い物というイメージがありますが、「瓦」=「粘土質の焼成焼き物」と思ってあげると随分身近なものになるのではないでしょうか。
もっと身近に瓦を感じて、魅力を鑑賞いただけたらなぁ。
ちなみに骨董として瓦コレクターの方がいますが、瓦の値打ちが付くのは奈良とか平安時代の頃のものでないとあまり値打ちが付きません。
もし瓦コレクターを目指すなら、この時代がねらい目ですよ!
以上。
「おらがまち」まちこでした。
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