こんにちは。
弱小文化財応援ブログ「おらがまち」まちこです。
家に隙間風が入ってくると、どこか建てつけが悪いのかな~
家の壁が土壁だと、地震のときの耐久性の問題から辞めた方がいいかな~
と、思ってしまいます。
確かにある意味では弱い部分ではあるかもしれませんが、現在の建築基準が適応されるまでは、1000年以上この様式で日本の建物は建てられてきていました。
隙間風はダメ、土壁は弱い、と断言するにはちょっと残念。
これらには、実は機能的なところがたくさんあります。
ではでは一体どんなところがすごいのか。
今回は日本の古建築の良い点を見て行きたいと思います。
それでは早速!
屋根がけっこう大事
地震で押しつぶされる?
昔の屋根といえば、お寺や神社・城郭の屋根を飾る「本瓦葺(ほんがわらぶき)」が思い浮かびます。※上写真
ほかにも「茅葺(かやぶき)」や「檜皮葺(ひわだぶき)」など、草木を敷き詰めたものなどもあります。
↑ 茅葺
↑ 檜皮葺
そして総じて、昔の屋根は「重い」。
めっちゃ重い。
「茅葺」「檜皮葺」は、草木の屋根だからそんな重くないだろうと思われがちですが、重ねる量が半端ないので、それなりの重量となり屋根を重くします。
ちなみに、唐招提寺金堂の屋根の修復時の報告書によると、瓦の総数は約3万枚、総重量は諸々ふくめて400トン!
で、この金堂を坪数に直すと120坪くらい。
現在の普通の20坪の一般現代家屋だと3トンくらいだから、÷6としても凄まじい重さです。
さらに、昔はこの瓦の下に土を敷きつめていたので、その重さたるや云々。
これだけ重たいと地震のときに上から押しつぶされてしまいそうなイメージですよね。
でも、そんなことはほとんどありませんでした。
昔の古建築にとってこの屋根の重さはとっても大事。
この重さが、地震などの衝撃を受け柱などで分散させ、こうした流れを上から抑えて建物を安定させる効果があったといわれています。
あえての、重さだったわけです。
だから、屋根が重いからダメではありませんでした。
むしろ重い方がいい。
現在は、こうした上からの圧迫を阻止するために、逆に家自体を軽く丈夫にすることを目指しています。
壊れにくいようにするのがモットー。
普通に考えると、現在の屋根を軽くするという方針の方が、地震対策としてはいいような気がします。
でも、昔の建物は違いました。
五重塔などが地震で倒壊したというニュースや話を聞いたことってないですよね。
あんなに何重もの重たい屋根を乗せているのに、地震で倒壊しないこの不思議。
屋根は古代の知恵と技術を垣間見ることができる面白い部位なんです。
ちなみに昔の瓦は一枚割れたくらいでは雨漏りなんてものはしません。
しかも、現在のものと違って厚く重たいので、そうそう壊れることもありませんでした。
また「茅葺」「檜皮葺」なども、50年ほどの単位でメンテナンスしてあげれば、建物を何百年と守ってくれていました。
昔の建物だから、壊れやすいというイメージは案外間違っていたりするんです。
木の家は色々弱い?
隙間風はいいこと
木の家はどうしても、木の乾燥などで縮んだりしてしまうので、隙間風が出てきてしまうことがあります。
隙間風があると「建てつけの悪い家」となってしまいますが、これ決して悪いことではありません。
隙間風があるということは、そこに「空気の流れがある」ということ。
つまり、密閉性がない。
良くいえば、外と中の空気が上手い具合に循環されていることになります。
最近は、シックハウス症候群で辛い思いをしている人が多いと聞きます。
これは家の内部が完全に密閉されてしまい、化学物質が充満してしまうから。
とくに高層マンションなどは、窓が開けられないようになっていたりして空気の流れをつくることが出来ない場合もあります。
密閉性が上がると、寒いと極端に寒くなり、熱いと極端に熱くなります。
だからエアコンが必需品に。
そして寒い時期などに密閉性の高い部屋で暖房をつけると、押し入れなどは逆に湿気のたまり場となり、ここで、除湿機が登場。
密閉性のある家は、エアコンと除湿機が必需品です。
だから、ず~とこの悪循環が置き続けます。
一度田舎のエアコンのない家に行ってみると、その違いにきっと驚くと思います。
エアコンなくても、除湿機なくても結構イケる。
むしろ扇風機だけでOK。
とはいえ、昨今の夏の暑さは異常ですので、無理せず適度にエアコンなどを利用しましょう。
実は木の家は燃えにくい
例えば、現在大通りに面した家は木ではダメ、とか、民家はダメ、とか、防火の関係で制限されることがあります。
はい。
木は燃えます。
めっらめっら燃えます。
でも、意外に木材の芯の部分は残っていることが多い。
木は燃えますが、なかなか火がつかない素材でもあります。
火起こしやたき火を思い出してもらうと簡単。
木に火ってなかなかつきませんよね。
あれです。
でも、一旦火がついてしまうと炭火と同じで、中にくすぶってしまい、消火出来ない状態にもなります。
だから、防火の制限が出てきてしまうんです。
さらに、現代の家の中には、そここに石油系の素材があります。
例えば、カーテンを綿100%で全部屋に設置しているお家って、まずないです。
綿100%は、遮光遮熱などの加工がされていないから、最近は数を減らしている感。
なので、大体ポリエステル100%とかじゃないかな。
ポリエステルは石油からつくられている化学繊維。
このカーテンやカーペットなど、家の中にあるこうした化学繊維は火の通り道を作る原因とされています。
どんどん火を増加させる燃料があるのと同じなわけですな。
そりゃ木の家、メラメラ燃えます。
じゃあ、カーペットの仲間?畳はどうなんだってなります。
これ実は、
消防庁も認める難火性の素材なんです。
畳は燃えにくいもの。
カーペットを敷くくらいなら、琉球畳のようなフローリングの上にポンとおけるものが断然いい。
そもそも、古建築にカーテンやカーペットはありません。
だから、昔のような生活をしていれば、その家は基本燃えにくいわけです。
といっても、そんな生活は現在では土台無理な話しなわけで。
ただ「木」=「燃えやすい」というのは安易な考え方で、決してそうではないというのをちょっと知ってもらえたでしょうか。
過去と現在の違い~まとめ~
今の建物を一言で表現するなら「軽」、昔の建物は「柔」。
「重」ではなく「柔」。
それは、屋根の項目で触れたように地震に対する考え方に顕著に出ています。
衝撃を上手く受け、分散させて建物を守る。
古建築は「遊び」「隙間」を上手く利用して、こうした構造を作り上げます。
他の建具や壁、釘の使う場所、構造上、ほぼこの考えのもとに作られています。
今のように建築に数式が用いられていたわけではありませんが、昔の大工さんはこうした地震や火事などの対して、経験からこれがいいというのを知っていました。
※規矩術(きくじゅつ)といった考えはありました。
この木なら燃えにくい、この部材をここに置けば変形しにくい、などなど。
「いいものは残る」
これは、どこの世界でも同じです。
日本の古建築も、いいからこそ今まで残っています。
もちろん長所があるなら、短所もあります。
土壁なんかは、地震がくればすぐボロボロと崩壊します。
でも、家の構造がのこっていれば、そこにもう一度土壁だけ作り直してあげればいい。
木枠が歪んだら、あっちをひっぱりこっちをひっぱれば元通り。
どこを長所ととるか短所ととるか、その違いなだけかなと個人的に思います。
だから、もしこの人生で家を建てる機会に会えたなら、まちこはログハウスを建てたい。
木造住宅とは全然違うジャンル・・・ではありません!
ログハウスは、奈良時代の正倉院と原理的には全く同じです。
↑ ぶっちゃけ値段はお高い本ですが、学校や図書館にあったら手に取ってみると面白いです。 正倉院は宝物ばかりに目が行きがちですが、建築をメインに解説してくれています。
木材を交互に重ねて組み合わせて行く、ちゃんとメンテナンスをしてあげれば、夏は涼しく、冬は暖かく過ごすことが出来ます。
地震や火事にだって、それなりに強いです。
とはいえ、まちこは建築の専門家ではありませんので、ほぼこれは個人の趣向でしかありません。
日本の古建築を完全に再現して、個人の邸宅を建てるとなったら、そりゃもう云億単位でお金がかかります。
どう考えたって無理。
だから、現在の生活にあわせつつこうした部分を活用出来たらいいですよね。
例えばシックハウスに敏感な御家族なら、いっそのこと土壁にしてみる、とか。
加工したものを利用するのではなく、木そのものを素材を上手く利用した建物にする、とか。
今はこうした古来の技術が見直され、現代風にアレンジされたものがたくさん出るようになってきました。
色んな技術や応用がありますので、専門家に相談してみてください。
↓ 資料を見るだけでも面白いです。
こうした小さなことが、日本建築技術を後世に綿々と伝えていく一つの手段ともなります。
弱小文化財を応援するまちこは、家を建てるならやっぱりどこかにこうした伝統技術を残してほしい。
と超思ってしまうのです。
以上、木造住宅の良さでした。
「おらがまち」まちこでした。