こんにちは。
弱小文化財応援ブログ「おらがまち」まちこです。
どこのお祭りでも、必ず目にする「神輿」。
神輿は初めから組み立てこそしませんが、様々な後付部品があります。
また、壊れてしまったら業者さんに修復の依頼をしなければなりません。
神輿の各部位にはそれぞれちゃんと名称があって、知らないと組み立てのときにちんぷんかんぷんだし、修復の電話をするときにどこの部位かも伝えることが出来ません。
そこで今回は神輿の部位についてご紹介。
それでは早速神輿の解剖をしてみましょう!
神輿の部位名称
各部位は細かくしてしまうと、ものすごい数になってしまいますので、ざっとこの辺りを覚えておけば大体どこの都道府県、地区に行っても話は通じます。
地区の青年団などに入って、まだまだ若いうちは色々触らせてもらうことは出来ないと思いますが、その時は修業期間だと思って、神輿のこと勉強してみて下さいね!
ではでは細かく見て行きましょう。
屋根
唐破風屋根・延屋根
神輿の形は大きく屋根に特徴が出ます。
大まかに2種類で、「唐破風屋根(からはふやね)」と「延屋根(のべやね)」に分けることができます。
写真は下部中央でギュインと曲がっているので、唐破風屋根。
延屋根は直線的ですが、近年になると端にむかって湾曲してきます。
この屋根の形は、その神輿の神社の屋根を真似るのが基本。
全部これにあてはまるわけではありませんが、神輿の形を観ればその神社の形がわかるのが屋根の特徴。
露盤と鳳凰・宝珠
神輿の最大の目印といえば、頭部にいただく「鳳凰(ほうおう)」。
この鳳凰を支える部分を「露盤(ろばん)」といいます。
頭部の鳳凰は、「宝珠(ほうじゅ)」であることも。
その違いは?
これについては諸説ありますが、一説には宝珠の方が古い形態の神輿といわれています。
とはいっても、よくわかってないのが実情だったりする・・・
鳳凰・宝珠については安房神社の神輿の記事へ。
小鳥
屋根四隅にある小さな鳳凰型の鳥。
外側に頭を向け、尾の方を中央に向けます。
取り外し可能なものも多く、モミサシのときには取り外すことも。
なんせ壊れやすい所にいるもんで。
屋根紋
屋根四面中央に掲げられる神社の紋。
もしくはその神社にちなんだ紋章がつけられます。
ちなみに巴紋が多いのは、火伏の意味合いがあることから結構オーソドックスに使用されている紋だから。
そして、全国各地にある八幡神社の紋でもあるためよく見られるので、神輿=巴紋と思われることもしばしば。
野筋
屋根の4面の板と板が合わさる部分を「野筋(のすじ)」。
野筋は屋根にそっとキンキラの金具をつけていますが、素材自体は木。
そこに金具を後付け。
ただの飾り部分というだけでなく、屋根の4面の接合部分でもあり重要な役割をもっています。
蕨手
野筋の先にくるんと丸まっている四隅、小鳥が乗っている部分を「蕨手(わらびて)」といいます。
飾り部分の要素が強いように思われがちですが、飾り紐を通す部分でもあります。
ここで飾り紐をがっちりと組むことで、神輿全体を締め、モミサシのときの安定性を増すことが出来るという優れもの部位。
吹き返し・軒面
基本屋根の最下部は「軒面(のきつら)」のみ。
が、地域や神輿によってはそこに装飾部分である「吹き返し(ふきかえし)」がつきます。
この部分は単なる飾りではなく
このように賽銭を受け止める重要な部位。
との説がありますが、こちらも定かでないです。
隅木・垂木
屋根の下部にある部分。
屋根の四隅下にある突起物を「隅木(すみぎ)」。
屋根の下全体に細かく配置されている部位が「垂木(たるき)」。
隅木には、風鐸をとりつけるための金具が設置されることが多いです。
垂木は建築上では屋根を支える重要な部材で、日本家築の屋根部分には欠かせない部材の一つ。
神輿は日本建築の要素がたくさん。
垂木についてはこちらの記事へどうぞ。
堂
枡組み
屋根の下、神輿胴体部分上部にある細かくたくさん突起した部分が「枡組み(ますぐみ)」。
精密に組み込まれた部位で、神輿の場合もちゃんと組み立てられています。
外から接着剤とかでくっつけてるわけではない。
日本建築ではこの部分が大変重要で、枡組みがあることで屋根の重さを胴体部分へ受け渡すところでもあります。
とっても重要。
この枡組はとってもおもしろい。
狛犬
神社だと本殿拝殿の前で鎮座している「狛犬(こまいぬ)」ですが、神輿の場合はちょっと配置場所が特殊。
数も四隅の1面2匹、合計8匹が基本で、枡組みの下の部分に配置されます。
狛犬だけでなく、獅子などが配置されることもあり、装飾部分として手の込んだ部位。
戸脇・堂柱
ここは神輿の一番のみどころといってもよいところ。
「唐戸(からと)」「戸脇(とわき)」「堂柱(どうはしら)」は、神輿の彫刻が際立つところで、所狭しと縁起物が彫られます。
宮彫師たちの一番の腕の見せ所。
唐戸・長押
「唐戸(からと)」は神輿正面に配置された、扉。
神社の御祭神の御霊を入れるところなので、施錠(海老錠)があるという手の入れよう。
神輿に1つ。
「長押(なげし)」は枡組みと装飾部分の胴体をいったん区切ってくれる場所。
といっても、ただの白木であることはあまりなくて、錺金具(かざりかなぐ)で美しく彩色されていることがほとんど。
両者ともちょっとした手間暇がかかっているので、神輿の隠れたみどころ。
擬宝珠・勾欄・腰枡
神輿の胴体部分下部を飾るところ。
「疑宝珠(ぎぼし)」と「勾欄(こうらん)」。
「腰枡(こします)」は下部を支える基礎で、勾欄はこの上に設置されている囲い。
擬宝珠を掲げる勾欄のような囲いを持つ建物は、「神聖である」とか「格式が高い」といった暗黙の意味が込められています。
鳥居
いわずもがな神社には絶対のつきもの「鳥居(とりい)」。
四方中央に配置され、ここから先は聖域であるという位置づけをさせる重要な部位。
神社と同じ。
階
神輿の正面唐戸前に設置された階段を「階(きざはし)」といいます。
神輿に1つのみで、必ず唐戸の前。
囲垣・地福
台輪の上部に囲って置かれている長押のような部分を「地福(じふく)」といい、「囲垣(いがき)」の土台としてこれをささえます。
柱の一本一本に錺金具がほどこされ、手の込んでいる部分。
ここがないと神輿がスカスカした雰囲気になってしまう。
台輪
神輿の屋根と胴体部分をささえ、なおかつ担ぎ棒を納める部分。
神輿の大きさはこの台輪の大きさ。
なので、「120センチ」といったらこの台輪の部分が120センチということ。
時代が下るほど縦幅が大きくなるのが特徴。
これは荒々しく担ぐことが主流となってきたことに起因していて、しっかり担ぎ棒を組み込みたかったためといわれています。
基本1段のものが多いのですが、中には2段組みの台輪もあり重厚さや豪華さを出す効果あり。
2段の場合、上段の方が薄くすぐ上の地福とごっちゃになりやすいですが、全然違う部位です。
形はのっぺりんの箱形「角台輪」のもののほかに、丸みを帯びた「三味線胴」というものがあります。
どちらかというと直線的な方が古いタイプ。
基本穴が担ぎ棒をいれるための穴があいていますが、ないものも。
その場合、担ぎ棒は台輪の下に固定する形に。
台輪紋
台輪の4面中央に配置された神紋。
屋根紋同様、神社の紋がある場合が多いですが、ここに彫刻や錺金具を設置する神輿もあります。
台輪隅金物
台輪の4隅を固定する錺金具。
一見豪華な錺金具ととらわれがちですが、台輪を四方からがっちりと固定するための強固部品でもあり、下部の台輪を保護するための金具でもあります。
ここを気にすると激しいモミサシはできない。いわば消耗品でもあるとこ
担ぎ棒
台輪の穴に差し込んで、氏子たちが神輿を担ぐための部位。
色々な組み方があって、本数もそれぞれの地域によってバラバラ。
ちなみにまちこの地元南房総は2点棒が基本。
その他
ほかにも後付されたり、オプション的なものは以下の通り。
作人札
「作人札(さくにんふだ)」は作り手の名前を記した木の板。
由緒ある神輿なんかだと結構置いてあることがあります。
駒札
頭部の鳳凰の足元に置く事が多く、地区の名称などが書かれた木の板を「駒札(こまふだ)」といいます。
鏡
唐戸の前に設置されます。
1面であったり、2面であったり、枚数などはいろいろ。
神社の御神体として置かれている鏡同様、神様の依代となる大事なもの。
瓔珞・風鐸
神輿の飾りで、隅木に取り付けられている風鈴のようなものを「風鐸(ふうちゃく)」、堂を隠すように取り付けられている(写真のような)金属製の飾りを「瓔珞(ようらく)」といいます。
神輿のモミサシの場面でははずされることが多いですが、これが取り付けられている神輿のモミサシは「シャンシャン」と美しい音がして、いかにも神様がいますって感じで個人的に好き。
神輿のいろは~まとめ~
神輿の部位の名称って、時代時代で、地域地域で、あったりなかったりします。
なので、せっかくだからまちこの地元の南房総の神輿を写真で解説してみました。
ちなみに館山や南房総の神輿はちょいと特徴が多くてないものもあります。
想像する神輿とは大きさや形もすこ~し違いますので、興味のある方は南房総のお祭りに遊びにきてください。
このように、南房総や館山の神輿もすべてこれに当てはまるわけではありません。
見分けがつかない部分もあると思います。
各地域によって、神輿の形態は異なりますし、扱い方もまた違います。
でも、基本はこれ。
参考にしたのは「おらがまち」の必読本のこちら ↓
いつも参考にさせて頂いています。
この本のおすすめポイントは、「神輿のいろは」が全部詰まっているというところ。
各地区に1冊あっても損はないんじゃないかという一品です。
飾り紐の結び方や神輿を傷つけないために気をつける事、担ぎ棒の組み方などを細かく
解説。
神輿の歴史や保管、修復のことまでかかれています。
これから神輿を維持継承して行くのも、それぞれの神輿所有地区でしかありません。
他人任せに出来ないからこそ、こうした基本はとっても大事ではないかと思います。
区長さん、若いもんのために一冊いかがでしょう??
というわけで、今回は「神輿の部位」についてでした。
以上「おらがまち」まちこでした。