おらがまち

知れば知るほどおもしろい!自分の町と日本の文化!

お歳暮の意味を知ったらいらないとは思わない。誰になにをあげるのかが大事。

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こんにちは。

弱小文化財応援ブログ「おらがまち」まちこです。

 

社会人になると夏と冬に気をもむ行事がやってきます。

それは「お中元」と「お歳暮」。

 

日頃お世話になっている人への感謝の気持ち。

 

と思ってやっているわたしたちですが、

 

これ

 

本当の意味は違うんです。

 

 

知ってるようで知らない、わたしたち日本人のしきたりについて詳しくみてみたいと思います。

 

 

ちょっとマニアックだけど、早速みてみましょう!

先祖供養のためのプレゼント

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お世話になった上司や知人に感謝の気持ちを込めて、夏と冬にプレゼント。

日本人の心意気を感じますよね。

 

なんて、思っていたら、実は大間違い。

 

どこの家でも大変。

毎年恒例の夏と冬の贈答問題。

 

「お中元(おちゅうげん)」と「お歳暮(おせいぼ)」です。

 

何を送ったらよいのか、ものすごく迷いますよね。

なんせ種類も多種多様。

デパートやネットなんかで、色々探すけど毎年毎年頭を悩ませます。

 

しかも送る時期も限定されているので、この時期までに注文しなきゃ!とか、いつまでに送らなきゃいけないんだっけ?とバタバタすることもしばしば。

 

でも、「お中元」と「お歳暮」の本当の意味を知っていると、品物の選びで迷ったり、送る時期に迷うこともなくなるんです。

そもそも中元やお歳暮ってなんであるの?

そもそもお中元やお歳暮の歴史っていつから始まったのか。

 

日本でこうして一般的に庶民が行うようになったのは江戸時代といわれています。

その前、鎌倉時代や室町時代にもこの原型となる形のものは行われていましたが、正確にいつからはじまったとい確証はありません。

 

お中元の起源は中国の道教。

 

「中」元、ちゅうげん、なかのげん

 

というくらいなので、本来は「上元」「中元」「下元」の3つでワンセット。

 

日付もそれぞれ決まっていて

  • 上元・・・旧暦1月15日(現在だと2月上旬~3月上旬)
  • 中元・・・旧暦7月15日(現在だと8月上旬~9月上旬)
  • 下元・・・旧暦10月15日(現在だと11月上旬~12月上旬)

となっています。

 

これ、いずれも先祖の供養のための行事。

簡単にいうと、お盆みたいな日が年に3回あると思ってもらえればいいかな。

 

死者の罪を許してください~

ご先祖様の罪を軽くして下さい~

と、神様にお願いする日です。

中元

世にいう「お中元」は、この「中元」の時期の贈り物になります。

で、お中元の時期をよく見てみると旧歴7月15日。

 

地方によってはピンとくる方もいると思いますが、これ、いわゆる「お盆」なんです。

 

「中元」という道教の先祖供養と、「盂蘭盆会」という仏教の仏事が、日本に入ってきて「習合」(いいとこどりして合体、混ざり合うこと)します。

こうした流れの中で、道教と仏教の共通の祭日となって、わたしたちの知る「お盆」という形になりました。

 

今は8月15日がお盆として確立していますが、地域によっては7月15日にお盆の行事を行う場合もあります。

 

では、「中元」が先祖供養の日だってわかったけど、「上元」と「下元」はどうなんだってなりますよね。

 

これもちゃんとみんなが知っている行事になります。

上元

上元の1月15日は「小正月」。

 

お正月の終わりとする日で、日本各地で左義長(さぎちょう)、よくいう「どんど焼き」や、お粥を食べるなどの行事が行われています。

また、この時期に元服を行っていたことから、昔は「成人の日」でもありました。

 

どんど焼きはお正月の飾りなどを燃やして歳神様を天に帰す儀式の一つですが、これはお盆の「送り火迎え火」に共通するものがあると民俗学的には考えられています。

 

お粥、とくに小豆粥を食べることは邪気払いになり、一年を無事に過ごせますようにと神様や先祖に願う意味合いもあります。

 

そして「元服」は、こどもから大人へなるための通過儀礼で、神様や先祖に報告する儀式の一つでもあります。

 

つまりこうした行事もまた、上元と同じような先祖供養の意味合いを持つものが多く、一つの区切りの時期として、日本でも大きな役割を担っていました。

下元

そして下元ですが、実はこの時期に日本で決まった行事というのは特にありません。

 

ただ、この時期は秋の収穫の時期と、冬の年末に向けてたくわえを神様に感謝するお祭りなどが各地で行われています。

 

まちこ的にはこの下元が、現在の「お歳暮」の原型ともいえるのではないかと思っています。

 

「お歳暮」は、今年一年の感謝の気持ちを込めて、お世話になって人に贈り物をしますが、これも本来は先祖の供養のための行事。

 

日本では年末になると、先祖の神様やその年の神様(年神様(としがみさま))に感謝し、酒や餅などをお供えしたりします。

 

その年に採れたお米や野菜、魚などを先祖に供える、なんて先祖供養の「下元」によく似たイベントだと思いませんか?

 

お歳暮もまた「下元」の影響を受けたものであるといえると思われます。

家にいないから、「だから」のイベント

だから、本当ならこの日にはちゃんと家で先祖の供養をしなければならない日なわけです。

今でも「お盆」のときになるとみんな一斉に実家に帰省しますよね。

 

でも、そう出来な事情が今でももちろん、昔だってありました。

 

だから、この時期に家を離れてしまった子供たちが、親元に魚や米、酒などを送っていたわけです。

 

自分たちはいけないけど、お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃん、俺の代わりに供養しといてね、って。

 

本来はこのような「親と子」「実家と分家」など、血縁同志のみでの行われていたものでした。

 

もし上司や近所ばかりに気を使って実家に送っていない、なんて場合は、本当の「お中元」や「お歳暮」の意味から離れてしまっていますよ!

 

是非今年からは、実家にも送ってあげて下さいね。

ご先祖様は、わたしたちの「気持ち」を待っているかもしれませんから。

 

ちなみに四十九日(七七日:しじゅうくにち)などの追善供養といわれる行事も、大事なご先祖様供養の日。

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明治時代のデパート戦略

「家族間」でのやりとりであったはずのお中元やお歳暮が、日頃の感謝の気持ちを込めてという形になったのはなぜなんでしょう。

 

夏や年末になると特にニュースになる「お中元商戦」「お歳暮商戦」。

よく聞くフレーズですが、ここにヒントがあります。

 

お中元もお歳暮も、実は百貨店の販売戦略です。

しかも明治30年頃のつい最近の話し。

 

夏のお中元の時期は百貨店は売り上げが落ちる時期で、この「中元」を上手く利用した最高の戦略でした。

お歳暮も同様。

 

まんまと日本人乗ってしましました。

 

が、これも決して悪いことではありません。

 

「土用の丑の日」も同じような戦略で今に定着しているからです。

 

こちらも、ウナギが売れないお店が「夏バテしないように栄養満点のウナギを食べようぜ!万葉集の御墨付けだぜ!」と売り出したことにはじまります。

これがバカ売れし、現在も「土用の丑の日に=ウナギ」というイメージが定着しているからです。

 

そもそも日本人はこうした「モノをおもしろく売る方法」をよく知っている。

はず。

です。

が、もごもご。

 

話しがずれてしまいましたが、こうした百貨店の作った仕組みに乗っかってしまったので、本来の「お中元」や「お歳暮」の意味を知る人が少ないというわけです。

 

だから「日頃お世話になっている人へ感謝の気持ちを込めて」に全く違和感を感じないんですね。

 

これも決して悪いことではありませんが、現在のスタイルにそぐわないと、大手企業では「お中元」や「お歳暮」を禁止しているところもあります。

 

手当たり次第やってたら破産してしまいます。

本当の送りたい相手を見極める、そんな時代に入ったのかもしれません。

お歳暮とお中元で気にすること

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ところで、送ると決まったら、何に気をつければいいのか。

 

気になりますよね。

品物?

時期?

 

と、いろいろ悩むところはありますが、民俗学的、歴史学的にまちこがおすすめするもの、気をつける点を挙げてみました。

お歳暮は「魚」?

お歳暮は「年末」の歳神様やご先祖のために、お供えするためのものです。

時期

12月に入ってから、年の瀬の忙しい時を除く時期。

25日頃から、年越しの準備に入るので、それまでに届くようにする。

品物

その年に収穫された新鮮なものが良い。

例えば、その年の新米。

 

新米でお餅をつくって新年を祝うのは今でも定番スタイル。

お餅やお米をあげるのもベストです。

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よくお歳暮に塩漬けされた「新巻鮭」が定番となっていますが、これにもちゃんと理由があります。

 

「年取り肴(としとりさかな)」といわれ、昔から年越しの御膳にかかせないものとして欠かせないものでした。

 

「塩」につけられていることから長期保存もきき、冷蔵庫もない年末年始の食を支えていたこともありますし、「塩」は古代から貴重な調味料とされ、浄めの儀式などにも利用され神聖視されてきました。

 

新巻鮭は、今年採れた新鮮な魚を神聖な塩で作られたので、神様にお供えするには持ってこいだったわけです。

 

鮭だけでなく、地方によっては塩ブリなどもあり、日本各地でお歳暮として今でも送られています。

お中元はお盆を目安に

お中元は「お盆に送るもの」に等しいです。

なので、以下の点に注目。

時期

8月に入ってお盆までに届ける。

品物

お盆の時に仏壇などに供えられるようなものが望ましい。

 

例えば

常温で日持ちのするもの。

あんこは、どの時代に遡ってもご先祖様は好きですよ。

小豆は、色が赤色であることから邪気払いの食べ物として昔から重宝されていましたので、夏バテの邪気除けとしてもおすすめ。

 

缶詰に入っている水ようかんやゼリーなどは、仏前にお供えするのに最適です。

 

お盆のイメージだと果物や野菜などもありますが、こちらは日持ちもしませんし、夏に大量に生ものが贈られてくると受け取り側は困ってしまうことが多いのであまりおすすめできません。

 

ご先祖様が死んでからどれだけ苦労しているかは、地獄ってどんなところ?の記事へどうぞ!

いかにお盆の供養が大変化がわかります(笑)

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お歳暮とお中元は必要~まとめ~

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わたしたち日本人は、普段「信仰心」のかけらもないとよくいわれます。

しかし、実際には宗教色の大変濃い生活をしています。

 

例えば、今回の「お中元」や「お歳暮」。

 

毎年気にもせず、日頃の感謝をこめてお互いものを送り合っていますが、ホントは先祖供養のためのイベントです。

 

ほかにも

など

ちょっとしたときに気づかずやっていることたくさんあります。

 

日本人の宗教は表に出ることがあまりなく、「南無南無」「アーメン」とお祈りすることも日々の生活にはほとんどありません。

 

それはあまりにも生活に根付いてしまっているから。

 

日本人のおもしろ宗教観。

このブログでもいくつかご紹介していますが、ホント面白いんです。

 

お中元やお歳暮も一種の歴史の中の文化。

今でも続く、誰の目にも止まらない「文化の財」の一つです。

最近は廃れつつある文化ですが、もう一度見直してみる時期に来ている岐路に立たされている文化財かもしれません。 

 

 

今回は「お中元」「お歳暮」でしたが、また他の記事でもご紹介できればと思っています。

 

ではではまた次回!

以上「おらがまち」まちこでした。

 

< 参考文献 >