こんにちは。
弱小文化財応援ブログ「おらがまち」まちこです。
今日は「老舗」を応援です。
実はこの「老舗」には色々な日本の文化がつまっています。
日本独特の考え方や精神性など、ギュッと盛り沢山。
なぜ老舗はここまでつづくのか、詳しく解説して行きたいと思います。
では早速!
老舗とは
老舗の定義
老舗の読み方は「しにせ」で、「ろうほ」などともいわれます。
先祖代々続いてきた小売店や企業などのこと。
「老舗」は何年以上続けはそれになり、そうでなければ違う、こういう条件なら老舗になる、といった定義はありません。
ただ、調査統計上何年以上のものと区切りをつけているだけ。
今回は100年以上を基本としてこちらに掲載します。
今の時代、老舗の数や持続年数などは各調査会社が細かく教えてくれます。
便利になりました。
東京商工リサーチの調べでは、2017年に創業100年以上となる老舗企業は全国で33,069社で、1000年以上は7社あるそうです。
そのうち、上位10社を以下に引用させていただきました。
東京商工リサーチより
業種は以外に旅館・ホテルが多く、時代としてみると明治時代が圧倒的に多いですね。
また、これらの統計には宗教法人や政治や文化団体は含まれていません。
すべて入れたらもっとすごい数になります。
2018年9月で全国の企業数は約808万件なので、比べる年数は違いますがこのうちの0.4%が100年以上の老舗ということになります。
1%以下です。
少ないです。
ただし、50年以上とかになるとこの率はグンと上がる。
ここでは100年以上を基準にしていますが、お家のすぐ近くに創業80年とか、創業50年、なんてお店はざらにあるのではないでしょうか。
そう思うと日本には老舗と呼ばれるお店がかなり多いことに気づくと思います。
他参考文献:TDB REPORT 92 号-特集 伸びる老舗、変わる老舗-帝国データバンク
世界から見ると
では、日本には老舗が多い多いといいますが、世界からみるとどうなのでしょうか。
以前韓国の銀行が創業200年以上の企業の調査を行ったところ、上位5社すべて日本だったそうです。
また、調査対象すべてのうち5割強が日本の企業だったとか。
日本は世界から見ると人間も長寿ですが、企業も長寿であるのが特徴。
これだけの老舗が今も経営を続けているなんて世界的に見るとすごいことなんです。
ずっと続く理由
長く続くというのはそれなりに理由があります。
以下にまとめてみました。
大きな民族の変化がなかった
世界中を見ても長く続く企業がある国には一つ特徴があります。
それは民族の大きな変化がなかったこと。
これは日本が一番わかりやすいのですが、一民族一国家、しかも外からの外的侵入者がなかったことがあげられます。
そして、これと対局して言えるのが中国。
何千年も続いてきた中国ですが、一民族一国家での国家運営が出来ていません。
色々な国や民族が入れ代わり立ち代わり様々な国を興してきたのは皆さんご存知の通りです。
安定してきたのは近現代になって来てからで、中国の創業150年以上の企業はわずか5社だそうです。
ドイツやアイルランドなどオーストリアなどは、国の境は時代ごとに少しずつ変わりまが、一王朝が様々な国家と婚姻関係をし長く続いて来た国。
古くからキリスト教を信仰してきたことも、変動が少ないことに一因しています。
そのため、日本に次いで老舗の多い地域となっています。
また諸外国は、対立関係にある相手を征服すると徹底的に潰してしまう傾向がありますが、日本はそれをやりません。
むしろ、相手を吸収して自分の身内にしてしまいます。
そのため、敵の文化であっても自分たちの文化に取り込むことが得意で、相手のものを壊してしまわないため、それぞれが対立することなく長く続いていくことが可能になります。
では、宗教から見るならイスラム教とかヒンドゥー経もずっと続いて来ているはずだ、日本だけこんなに続くのはおかしいってなりますよね。
これは日本人ならではの考え方があるからです。
社員は家族
日本の老舗企業にはもう一つ特徴があります。
それは社員の人数が少ないこと。
今でこそ少なくなりましたが、家族同然に社員を家に住まわせたり、一緒にご飯を食べたりします。
昔は「丁稚奉公(でっちぼうこう)」といって、小さなころからお店で働きはじめました。
店の主人や奥さんはこうした子供たちの面倒をみながら、お店を経営してきたという特徴があります。
つまり、自分の子供と同じ、社員も家族だったわけですね。
もし倒産の危機などで社員にお給料が払えなくなると、日本人の社長はどうにかして社員のお給料を払おうと身を削ってお金をかき集めます。
この姿を見るとこの人のために頑張ろうと、信頼がお互い出来て行きます。
そしてさらに前のご主人が頑張ってくれたんだから、次はお前もこのお店のためにつくしなさい、と代々続いていくわけです。
世界的に見ると、そこまできたらもう知らん、と、破産して倒産して普通なら終わりです。
でも、日本のトップはそれをやりませんでした。
なぜなら「同じ釜の飯を喰う」というのは神道に通じるところがあって、「共食」というものになるからです。
「共食」は、同じものを食したものと同化するという考え方です。
結婚式などで三三九度を行いますが、あれも「共食」で夫婦が一心同体になる儀式です。
神社にお供え物をすると、それを持ち帰って食べましょうってお話、聞いたこともしくは体験したことありませんか?
これは神と一体になるという儀式の一種。
昔の日本はこうしたことを社員とも行ってきました。
なので結束力が世界的に見て強いんですね。
こういった考えは日本独特のもので、老舗が長く続く由縁でもあります。
共食と結婚
必要とされていた
そして、なによりも大事なのがこちら。
必要とされていたからです。
1位にあがった建築会社の金剛組は、寺院の建立のために必要とされていたからです。
立ち上げてから、現在に至るまで寺院がなくなることはありませんでした。
つまり需要と供給が安定してあったというわけです。
また、上記10社のうち2社が宗教用具小売店ですが、こちらも宗教関係のお店です。
宗教がなくならない限り必要とされている商売ですよね。
では旅館・ホテルは?
娯楽施設の一つになるんじゃないか?
とお思いの方「湯治(とうじ)」を思い出してみて下さい。
昔、温泉は観光のためのものではありませんでした。
ケガや病気を治すための、いわゆる病院に近いところ。
これも、病院が常に必要とされていることを考えれば自然なことですよね。
こうして考えると今も老舗として残るのは、ちゃんとした理由があるからと言えます。
ただ、食べるだけ、作るだけなら残りません。
和菓子も食べるだけだって?
あれは、お城の御殿様のおやつをつくっていたからです。
いわゆる「御用達(ごようたし)」だから、残ったんですね。
天皇家も長く続いて来たから、江戸時代も優に300年物歴史を誇りますから!
有名なのは宮内省御用達の虎屋。
世界中老舗はピンチ~まとめ~
日本にある老舗はピンチのところが多いです。
古い伝統文化を引き継ぐだけでは、現在なかなか売り上げを維持・伸ばしていくことは難しいようです。
文化財の保護をしている方なら知らない人はいない「金剛組」は世界最古の企業で、飛鳥時代から続く老舗中の老舗で、世界に名を轟かせる企業でもあります。
実はこの金剛組は、経済的な理由から一時継続のピンチになった時があります。
しかし経理的な部分を外部におくことで現在も企業として継続中。
日本の老舗は、人数が少ないこと家族構成であることが大きな特徴でもあります。
しかし、こうした流れで今の時代を生き抜くのはとっても大変。
今、こうした老舗は様々な努力をしているのが現状です。
また老舗は日本が特に多いですが、世界にもたくさんあります。
特に長い歴史を持つ国に多いです。
わたしは「ベルギー王室御用達のチョコレート」って聞くとよだれが出ますが、皆さんはどうでしょう。
GODIVA(ゴディバ)やGaller(ガレー)が有名ですが、Mary(マリー)は最も歴史の古いチョコレートの御用達の老舗です。(※日本のマリーのチョコレートとは違うメーカーです。日本国内ではMadame Delluc(マダムドリュック)という名前で販売されています。)
イギリスなどでは紅茶が有名。
Fortnum & Mason(フォートナム・アンド・メイソン)は、王室御用達として150年以上の歴史があります。
ヨーロッパ辺りに行ってお土産に困ったら、王室御用達を探すのが一番いいですね。
日本と同じで、やはり老舗が選ばれる傾向があるみたいです。
中でもドイツは老舗企業が多い事でも知られています。
世界的に有名な鉄道模型メーカーメルクリン社(1859年)は、やはり日本の老舗同様に危機的な状況にありましたが、ついに会社更生法が行われるなど、どこの国でも老舗はピンチ。
「伝統」というキャッチコピーだけでは続いていけない時代というのも残念ですが、やはり時代時代に合わせた経営や商品の開発が前提なのかもしれません。
老舗が続くためには買い手の需要もそうですが、売り手・供給側の努力も必要なようです。
日本における「老舗」は世界の中でも独自のもので、一概に「会社」というくくりでは片づけることが出来ないという特徴があります。
諸外国と比べて会社更生法などをせず、自然に消滅してしまう可能性もとても大きい。
老舗に目を向けて商品を購入する。
これだけのことですが、わたしたちが一番老舗を応援できる形です。
というわけで、今回は「老舗とはなにか」。
日本でなぜ企業が長寿になるのかのお話でした。
以上「おらがまち」まちこでした。