おらがまち

歴史大好きまちこ主催!弱小「文化財」応援ブログ!

漆器の選び方について。漆かぶれと戦った縄文人とそれを維持する職人。

こんにちは弱小文化財応援ブログ「おらがまち」まちこです。

 

今、文化財の修復の中で危機になっていることがたくさんあります。

 

全てのものにいえますが、後継者不足とともにその材料となる資材の不足も懸念されています。

 

例えば今日お話しする「漆」。

 

日本の文化にはなくてはならないものの一つですが、これもまたピンチの状態です。

 

小さなことからコツコツと、あなたも漆の維持継承に一役かってみませんか?

 

需要が増えれば供給も自然に増えるものです!

だから今日は「漆」を宣伝して行きます!

漆の歴史

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縄文時代の人も痒さに耐えた!

漆が使われた形跡が残るのは、およそ12000年前からです。

 

時は縄文時代。

 

土器や木製品の模様・絵付などに使用されていました。

よく赤い塗装された土器を教科書なんかで見たことがあるかと思いますが、あの色は漆で作られています。

 

私は縄文時代の人は本当にすごい人たちだったと思っています。 

 

漆で痒くなるって皆さんご存知かと思いますが、そんな思いまでして縄文の人たちは芸術作品を作り上げて行ったんです。

痒くなるの知っていたのにわざわざ使っていたんですよ。

普通、こんな思いするくらいならやめようって思いますよね。

飽くなき芸術への執念です。

 

そこから時代を経て、ずっと「漆」の文化は途絶えることがありませんでした。

 

漆器が生まれたり、漆の工芸品が出来上がり、仏像や建築物などにも「漆」はたくさんつかわれていました。

 

ちなみに身近なところで、よく見る神社の赤い塗装も漆です。

 

漆は日本の文化や生活の中になくてはならないものとして、ずっと守られてきました。

漆=JAPANではない?

このように多くの人が「漆」といえば「日本」とすぐに発想しますよね。

 

「japan」といえば「漆」と翻訳されるくらいですから。

 

でも、これ、実は間違いらしいです。

 

実際にどの文献にも漆は「japan」ではなく「lacquer」と書かれています。

もっと古い時代だと「japan」=「漆」と翻訳されるようですが、現在においては「lacquer」が正解です。

 

もし、今「japan」=「漆」と訳してしまったらちょっと恥ずかしい思いをするかもしれませんので、翻訳の際などには十分気をつけて下さいね。

日本の漆器はプラスチック?

と、このように日本を代弁する「漆」ですが、皆さんのお家に漆製品ってありますか?

悲しいかな。

ないお家がほとんどではないかなぁ。

 

今は漆器に似たプラスチック製品が安価で販売されていて、それで充分と思われている傾向があります。

だって見た目良く似てますよね。

外側が黒塗りで中が赤く塗られているプラスチックのお椀をみて、漆器と思わないでくださいね。

 

でも、漆の製品を手に取ったり、口に触れたりしたことがある方は良く知っていると思いますが、プラスチック製品と全然違うんです。

なんというか柔らかさがあるんですよね。

 

螺鈿造りのすごい立派な文箱を買いましょう!

といっているわけではありません。

 

漆塗のお箸でも構いません、どうぞ手にとってみてください。

きっと、その感触の違いにびっくりすると思いますよ。

漆の用途

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特徴はとにかくすごい物質ってこと

では、漆ってのは何がいいのでしょうか。

見た目の話でしょうか?

それとも長持ちするから?長持ちしないイメージがあるって?

 

実は漆にはすごい力があるんです。

 

漆の製品を作るには、木から採取して塗り終わるまで様々な工程があります。

ここでは特に漆の硬化についてお話したいと思います。

 

漆は塗ってから乾かす作業があります。

これがまた特殊なんです。

 

乾くってのもちょっと普通の感覚と違って、乾燥して乾くのではなく、湿化(湿気を吸収)して乾くんです。

難しいですが、漆は専用の漆乾燥部屋みたいなものがあってちょっと湿度を持たせて乾かします。

湿度70~85%、湿度70~85%、温度24~28℃で、なおかつ空気の動かない場所がもっとも良いとされます。

 

漆は乾くと、硬化が起こって水や熱い湯をいれても溶けだしたりすることはありません。

酸やアルカリ、アルコールにも強いです。

しかも年をおうごとに硬化が進んで行きます。(※硬化好条件のもとで)

 

糊(のり)のように水に弱かったり、シールの様に熱に弱かったり、そういった欠点がほとんどありません。

また近年の研究では殺菌効果もあることがわかってきています。

 

すごい物質です。

 

適度に湿り気のある日本の自然環境の中であれば十分長持ちする製品なんですね。

 

だから、ずっと使用されてきたとも言えます。

漆の弱点

ただし大きな弱点があります。

 

紫外線に弱いです。

 

保管する際は光の当たらない場所・ちょっと湿気のあるところでお願いします。

 

また湿気に強いという事は、逆に言えばどんどん使ってあげた方がいいことにもつながります。

 

全然使わないで、乾燥し過ぎてしまうとこれまた劣化につながってしまいます。

これは下地に使われている木が乾燥で割れてしまったり、反って(そって)しまったりして表面加工の漆塗料を傷つけてしまうためです。

 

漆には適度な湿気がとっても大事です。

大事に大事にしまってあげるよりも、どんどん使ってあげた方が漆製品は長持ちします。

塗料・接着剤として

このような特殊な力のある漆は漆器製品のような食器などばかりではなく、様々なもに応用されてきました。

 

例えば建築。

日本は温暖で湿気の多い国ですよね。

漆はこういったところで一番力を発揮します。

 

建築の外装に漆を塗ることで、中の木材の雨などの水から守り、劣化を防ぐ役割をしてくれます。

また、台風などが連れてくるアルカリ(塩など)の雨風による、いわゆる塩害などからも守れます。

毎日雨風にさらされている建物には持って来いの塗料ですよね。

 

他には仏像。

建物同様の効果もありますし、製造過程で使用さたりもしました。

 

「乾漆像(かんしつぞう)」といって、木くずなどに漆を混ぜて作り上げていく方法です。

粘土の像を想像してもらえると近いと思います。

 

おもに奈良時代に盛んに使用された方法ですが、この後は木彫りのもの主流になってきたため次第に無くなっていきました。

なんせ当時も漆は高価でしたし、乾かすのにめっちゃ時間がかかったのです。

 

そのためこの後は、仏像の塗装などに用いられるだけとなってしまいました。

乾漆像裏話

余談ですがこの方法にはものすごい利点があります。

 

  • 乾漆像の場合

間違えて、鼻に目を作ってしまった!

大丈夫!

そこ削って、もう一回漆木くずを張り付けてしまえばOK!

ほら元通り。

 

  • 木彫り像の場合

間違えて、鼻に目を作ってしまった!

なに!

もう一回全部作り直さなきゃならん!

木を探してこい!

最初からやり直し。

 

こんないい利点があったのになぜすたれていったのかというと、上記にあげた高価・時間のためです。

 

仏像がたくさん必要になった時代が平安時代から鎌倉時代にありました。

たくさんの仏像を必要としていた時代にこのやり方は、たいそう割にあわなかったんですね。

そのため自然に消滅していったのです。

 

悲しいかな昔も今も、世の中時とお金だったのですね。

 

この話は長くなるので、機会があればまた後日。

 

 

話しはとんでしまいましたが、今の科学技術に勝るとも劣らないすごい物質だと思いませんか?

 

手間がかかり確かに高価な漆ですが、天然由来のもので自然にも優しい。

もう一度見直してみたらどうかと、最近とくに思います。

体への害を心配してる?

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漆器ではかぶれない

ただし、良い点もあれば悪い点もあります。

漆ってかぶれますよね。

 

私も漆の木のそばを歩くだけで湿疹出来る人間です。

 

でも漆器でかぶれた人の話を聞いたことありますか?

神社とかの柱を触って湿疹出来た人いますか?

まずないと思います。

私もないです。

 

乾けば全く問題ないのも漆の特徴です。

 

もしかぶれてしまった人がいたら、それはちょっと生乾きの製品だったのかもしれません。

塗りたての建物だだったのかもしれません。

 

漆は基本的に硬化すると、アレルギー物質であるウルシオールが揮発することがなくなるので安心して使用できます。

 

ちなみに漆職人さんはよく素手で生漆を扱っていますが、どうしてかぶれないか知っていますか?

 

これは完全なる「慣れ」です。

 

漆はかぶれこそすれ、だんだんと耐性が出来る事も知られていて、新米の漆職人さんは無理矢理重度のかぶれを体験させたりするんだそうです。

 

学生の時、専攻科目ゆえに生漆を使ったことがあります(なぜか素手で!)が、痒さは半端ないです。

水泡のようなものが手の平だけじゃなくて、特に指のやわらかいところにたくさん出来てしまって。

今考えてもあれを強制的にやられるのかと思うと、おそろしいです。

 

漆を扱う方々の根性たるや最初のこの試練を耐えているのですから、すごいです。

漆に過敏に弱い人はいる

ここでもう一つ。

突然ですがマンゴーアレルギーの方はいますか?

 

もしそうなら、漆の木の近くには行かない方がいいかもしれません。

または、漆の入った塗料などは使用しない方がいいかもしれません。

 

マンゴーもウルシ科の仲間なので、同じ系統のためアレルギー反応が起こる可能性があります。

気をつけましょう。

 

生漆を扱うなら手袋をしたり、マスクをしたりしてそれなりに防護した方が無難かと思います。

水銀とカドミウムへの考察

昔の漆は、「漆」といえば「日本」というぐらいその生産量も使用料も圧倒的に大きいものでした。

 

でも、現在の漆はほとんどが中国産で出来ています。

なんせ日本産は中国産の5倍以上の値段で、安価な中国産の漆は今や日本国内の9割を占めます。

 

日本参の漆はそのほとんどが寺社仏閣の修復の際に使われていて、一般にはほとんど出回っていません。

だからなおさら高い。

 

中国産のものでも構いませんが、混ぜ物が入っている可能性がとても大きいです。

ぶっちゃけ、自然に帰るものではなくなってしまっています。

漆のボリュームアップや、塗り重ねを簡単にするために溶剤(石油)などが入っている可能性もあります。

 

漆は昔から色々な混ぜ物で作られた経緯がありますが、最近のものは人工的な混ぜ物が多分に含まれています。

 

生活用品として使用するものであれば全く問題ない話しなのですが、口にする食器などとなるとちょっと気になりますよね。

 

たまに「朱」に水銀が混ざっているなどという話をよく聞きますが、水銀入りのものに限らず、重金属(水銀・カドミウムなど)は現在厳しく制限されていいます。

しかも一部文化財などの修復で使用されているぐらいです。

そこまで過敏になる必要もないと思います。

 

しかも、水俣病になった水銀と漆に使用されている水銀は種類が違うそうです。

身体にも吸収されない事が科学的に証明されています。

縄文時代から使用されてきた朱のことを考えると、もし有害な物質であれば昔の人はことごとく水俣病で死んでいったことになります。

 

そんなことないですよね。 

 

安易に情報に流されないことも大事ですし、そこで漆の文化が廃れてしまうのは大変悲しいことです。

長く続いてきたということは、こういった被害が出ていないということにもつながるはずです。

 

しかも、それならばプラスチック製品はどうだ?セラミック加工製品、シリコンはどうだ?とか、食品添加物はどうだ?そういった話にまでなってしまいます。

 

そうした化学物質が気になるのであれば、電子レンジを使用しない、食洗機を利用しない、たわしでごしごしこすらないなど、食器に過度な負担をかけない傷を作らない生活をしてあげるとよいですよ。

 

それでも気になるのであればお店の方に聞いたり、専門店で購入するのが一番かと思います。

 

漆を過度に怖がらないでくださいね!

漆製品のご紹介

「高ければいい安ければ悪い」ではないですが、安いものは安易に購入しないようにしましょう。

 

安いのはやはりそれなりの理由があるものです。

専門店など漆製品をちゃんとおろしているお店などで購入することをおすすめします。

漆器

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子供用食器セット輪島塗(出典:amazon

漆器は下地(素地)が木で出来ているので、重たくないし落としても割れません。

 

手を出しやすいのはスプーンやお箸かと思います。

 

口当たりもやわらかく、漆が塗られているのでただの木のスプーンより長持ちします。

お子さんや、おじいちゃんやおばあちゃんにはとても扱いやすいアイテムだと思います。

 

現代の生活に合わせて今は様々な形のものがありますので、色々見てみてくださいね。

工芸品

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文字盤が黒漆の腕時計(出典:amazon

工芸品というと、螺鈿細工も素晴らしいものすごい高価な日用品というイメージがあるかもしれませんが、今はこういったちょっとした部分に漆が使われているものも多いです。

 

さりげなく漆入っているっていうのもかっこいいですよね。

 

多分皆さんが思っている漆の工芸品ってのはこういのかと。

まえじゅう漆器 漆芸カードケース 金閣寺 3V-338

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  • メディア: ホーム&キッチン
 

これも素晴らしい伝統工芸という文化財です。

建築物や仏像など

黒漆で塗られた月光・日光菩薩像(出典:仏像専門店の≪仏像ワールド≫

自宅を漆塗にして欲しい!なんていう方はいらっしゃらないと思いますが、旅先で神社や仏像をどんどん見てあげて下さい。

 

ああこれにも漆が塗られているんだな、とか、この仏像は乾漆像で出来ている!なんて驚きの発見もあるかもしれません。

仏像の種類で、時代を見分けることも可能になりますよ。

 

 

ちなみに最近はやっている建物の壁の「漆喰(しっくい)」は、「漆」という漢字が入っていますが漆成分はまったく入っていません。

まちこ漆余談話~漆関連の後継者~

日本の文化財を守っていくためには漆はなくてなならないものです。

修復をするにも、工芸品を作るにも、建物を建てるにしても、何をするにも漆はどこかで関わってきます。

 

現在漆を扱う業種は後継者不足のため存続の危機にあり、特にそのおおもとである漆の木の育成者は激減しています。

 

現在国内で出回っている漆の9割以上は中国産です。

残り1割の日本の漆はその大半を岩手県が産出しています。

 

漆の木は一手間必要な大変育てにくい木として知られ、漆の樹液が採れるまでは10年近くかかります。

17年ほど経つと痩せて来て、漆の樹液が取れなくなってきてしまうそうです。

 

採れるまでが長く、採れるようになると終わるのが早いのが漆の特徴なんですね。

 

昔は軽くて水に強かったことから、漁業の浮きなどに使用されていましたが、現在は漆の樹液をとる以外に使う用途もなく、植栽する人もいなくなってしまいました。

またかぶれる木としてあまりにも有名なので、自宅に植える人もいなくなってしまったようです。

 

このため、岩手県では漆の木を見つけたら教えて欲しい、植栽や保育に助成金などを出して支援をしています。

また、自己流で漆を採る作業(漆掻き(うるしかき))をしないで、漆掻き職人に依頼するようにお願いもしています。

下手に傷つけてしまうと、採れなくなってしまこともあるんだとか。

 

先日国(文化庁)が、国宝や重要文化財の補修にはすべて国産の漆を使用することを決めました。

 

中国産は劣化するスピードが速く、後のメンテナンスや維持に手間やコストがさらにかかってしまうそうです。

ならば、もとから質の良い国産のものを使用した方が良いという考えなんでしょう。

 

伝統工芸技術者ももちろんいなくては困ります。

でも、そのおおもとである資材の確保も優先すべき事項だと思います。

 

木を育てたら勲章をくれる時代が来ますように。

 

安定的な生産が必要となった今、岩手県だけでなく他の地域でもどんどん頑張って行って欲しいと願うばかりです。

 

そんな漆職人を目指すのも文化財保護につながります。

興味を持たれた方がいれば岩手県に聞くのが一番近道かもしれません。 

 

おせっかいまちこでした。

 

参考文献:ウルシ植栽のすすめ「日本一の漆の里」

まとめ

私はかぶれてかぶれて、漆を扱う授業は本当にいやでした。

もともと皮膚が弱いのもありましたが。

 

人によっては皮膚ではなく、吸い込んだ呼気から漆を摂取し内臓がかぶれてしまう人もいます。

気管が腫れ過ぎてしまうと呼吸ができなくなってしまうこともあります。

 

そうしたリスクがありながら、果敢に初物へ挑戦した縄文の人たち、また今も続けている漆の工芸師さんたち、漆の木の世話をしている人たちは、本当に尊敬に値します。

 

「日本=漆」という考えがありながら、現代人にとって漆はとても遠い存在になってしまっています。

 

大変残念なことですがこれは世の常で、必要とされなければなくなっていくものなんですよね。

 

ここで紹介した「漆」や「漆製品」について、皆さんが少しでも興味を持ってくれればと思います。

 

私たちの日本の文化を守れるのは、私たち日本人でしかないと思います。

そんな役に少しでも立てれば幸いです。

 

以上、弱小文化財応援ブログ「おらがまち」まちこでした。

 

参考文献:うるしの話 (岩波文庫)