こんにちは。
弱小文化財応援ブログ「おらがまち」まちこです。
文化財保護の大学には、いろいろなジャンルがあります。
仏像、彫刻、絵画、遺跡、建築、庭園などなど。
でも、どのジャンルにしても修復のときに修復師たちが思っていることは同じ。
今回は、文化財の修復で大事なことをまとめてみたいと思います。
ではでは早速行ってみましょう!
ぴっかぴっかが目的ではない
以前イタリアの修復現場で、おばあちゃんが以前のものと全く違ったフレスコ画を書いたことでニュースとなっていました。
全然違う姿になったキリストが大いに受け入れられて、おばあちゃん本当良かった、です。
が、
本当なら、失敗してしまっても元の状態に戻せるようにやるのがベター。
イタリアのおばあちゃんの場合あえて戻さないようですが。
ほかにも彩色が剥げてしまっている仏像を修復依頼したら、金ぴかの色鮮やかピッカピッカになって戻ってきた。
なんて話も聞きます。
もちろんそれで依頼主が満足するならばOkですが、それはもはや修復ではないです。
「修復修復」とはいいますが、どこまで意識するかによって、文化財の修復は大きく変わってきます。
色々暗黙の了解とでもいう約束、公然とみんなが理解している約束とでもいいましょうか、文化財修復には大事な理念があります。
①昔のものが最優先
作られた当時の部品は、一番重要。
使えるのならば、それを使うのが最優先事項です。
削ってしまったり、それを取り払ったりなんてのは厳禁。
②現状維持も最優先
当初の部品が無いにしても、その後何度か修復をされたりしていると、時代時代の痕跡があります。
それはその文化財の歴史が刻まれているので、それを取り除いたりすることは基本しません。
③もとに戻せなければ意味がない
今最良の修復方法でも、後世にはそうでなくなる可能性があるのを理解した上の修復。
例えば、あんまりにも基礎が弱いからといって、建物の基礎をコンクリートでガッチガッチに固めるようなことはしない。
もし、後世もっといい方法が出た時、このコンクリートを取り除かねばならないのですが、これでは周りの部材も傷つけてしまうし、柱にも影響を及ぼしかねません。
だから、当初の部材を活かしつつ、現状維持を心掛け、薬品を使うのであればその薬品を後で除去できる薬品にする、など、細かな気配りが必要になります。
これら3点が「文化財の修復」ではとても大事なこととされています。
医療の現場でも、IT関連でもそうですが、技術は日々進歩します。
それは文化財の分野でも同じです。
ただ、文化財の場合は、先に先に進むことだけが良いわけではないというところが注意点。
過去の技術も取り入れつつ、未来の技術も活用しなければならないからです。
これらの折り合いをつけつつの作業になるので、どうしてもお金もかかれば時間もかかるわけです。
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依頼主にも知ってほしいこと
文化財の修復の仕事というのは、普通であればあまり利益になりません。
わたしが知っている仏像の修復師の方は、家族を養っていくだけで精いっぱいだといっていました。
材料費もバカになりませんし、わざわざ現地まで赴かねばなりません。
個人であればあるほど、修復側の時間も労力もお金もかかります。
では、それぐらい利益にならない仕事をなぜやっているのか。
それは彼らの使命感でしかありません。
でも、世の中にはそれを悪用しようとする人もいます。
時々聞くのは、文化財登録されているけど、辺鄙な片田舎にある神社などのおはなし。
修復をさせて欲しいと、氏子総代の電話番号をわざわざ調べて営業の電話かけてくる業者があるそうです。
でも、建築物だから建築会社に任せればいいやという、安易な考えは辞めた方がいいです。
その中には、神社の建築を専門にやっている業者さんで、背に腹を変えられず直接電話をしてきたのかもしれません。
すごく技術優れた立派な業者さんかもしれません。
でも、修復にはそれなりの技術というものがやはり必要なんです。
なぜなら、上でも話した通り、過去と未来を見越した考えがないと、後々取り返しのつかない事態を招きかねないからです。
安かろう、早かろうでは決めない
仏像をつくったことがあるからと、仏像修復の入札に参加し、その業者の価格が安いからと契約したとします。
そしていざ戻ってきた仏像をみたら、「なんかめっちゃ煌びやかになって、顔つきとかも前のものと全然違う・・・」なんてこともよくあります。
ただ、安いからお願いした。
ただ、早く終わらせてくれるから。
などなど。
確かに文化財の修復には時間もお金もかかります。
もう、なんでそんなもんにそんなにかかるんだよ~、ってのたくさんあります。
でも、決め手はそこじゃないんです。
営業の電話とかかかって来ても即決しないで、必ず市役所などに相談しましょう。
きっと、文化財課の方がちゃんとした業者を紹介してくれます。
文化財登録されていないけど、有名な人が作ったものなどはよく電話がかかってくるようなので気をつけて下さい。
個人の所有者の皆様要注意です。
だから畏れ多い~まとめ~
だから、まちこは声を大にして「大学は文化財保護の勉強をしていました!」なんて、声を大にして再就職をしたいと思いません。
「少し修復の仕事やらせてもらっていた時期もあります」なんてのも、恥ずかしくてぶっちゃけ言えません。
だって、これらのことをよく知っているから。
少しだけかじった程度では、文化財の修復ってのはとてもじゃないけど出来ません。
なので、畏れ多くてこんな中途半端な知識では、文化財の修復現場には行けません。
よく、求人募集に「要経験者」とかありますが、文化財関連の「要経験者」は「要注意」です。
文化財の修復を実際にやりたい、技術職としてやりたいのであればひたすら勉強と修行の日々です。
修復もその理念をちゃんと理解している人にお任せするのが一番。
もちろん、新たに生まれ変わらせたいという依頼主の方もいると思います。
どこにどこまでの線を引いて依頼するのか、修復する側はもちろんですが、依頼する側も全部一任するのではなく、修復の過程などもよく見、よく聞きことが大事なんだと思います。
文化財の修復には、軸となる理念があって、それをもって修復師の人たちは仕事をします。
ただものを直すのとは、ちょっと違う。
それをわたしたちも知っておかねばならないのかもしれません。
というわけで、今回は文化財修復の理念についてでした。
以上「おらがまち」まちこでした。
営業電話気をつけてね!