こんにちは。
弱小文化財応援ブログ「おらがまち」まちこです。
まちこの地元には、歴史がある古い神社があります。
安房の国一の宮である「安房神社(あわじんじゃ)」です。
全国的にパワースポットとして知られていますが、この安房神社の御祭神天太玉命(あめのふとだまのみこと)の奥さん神である「洲崎神社(すのさきじんじゃ)」もまたパワースポットととして最近注目が集まっています。
今回は、この「洲崎神社(すのさきじんじゃ)」についてご紹介します。
早速みてみましょう!
洲崎神社の基礎知識
御祭神
洲崎神社には御祭神である天比理乃咩命のほか、その夫神など家族神が鎮座します。
主祭神
天比理乃咩命(アマノヒリノメノミコト)・・・航海安全の女神
※洲ノ神(すさきのかみ)とも
相殿神
天太玉命(アメノフトダマノミコト)・・・天比理乃咩命の夫神、日本の全ての産業創始の神
天富命(アメノトミノミコト)・・・天比理刀咩命と天太玉命の孫神
稲荷神社
宇迦之御魂神(ウカノミタマノカミ)・・・食物の神(女神)
縁起
洲崎神社には宝暦3年(1753)に作られた「洲崎大明神由緒旧記」というものがあります。
これによると天富命が天比理乃咩命の鏡を御神体に、御手洗山(美多良洲山)へ祀ったことが始まり。
神武天皇の治世のときとされ、日本書紀に合わせて西暦換算すると紀元前のお話になります。
書物によると807年のときのこと。
では史実的にみて実際はいつごろなのかというと、これもまた定かではありません。
平安時代延長5年(927)の『延喜式』には「后神天比理乃咩命神社 大 元名洲神」という記述がみられますので、少なくともこの頃からはあったものと考えられています。
11世紀に書かれたといわれる「類聚三代格(るいじゅさんだいきゃく)」には、天平3年(731)の項目に「安房神社から女性のお手伝いの人たちが来て、朝廷の神事を行ったよ」とかかれているので、奈良時代(8世紀前半)には神社の有無はともかく、それに似た女性の祭祀集団が存在した可能性も指摘されています。
「后神天比理乃咩命神社」はこれにあたるものではないかとも。
と、創建にかんしてはあいまいな点も多いのもこの神社の特徴です。
これには理由があって、実は洲崎神社はもとは「后神天比理乃咩命神社」と言われていました。
この「后神天比理乃咩命神社」は「論社(ろんしゃ)」の一つで、同じく館山市にある「洲宮神社(すのみやじんじゃ)」もこれまでに述べてきたお話をあてはめることが出来ます。
「論社」というのはどれが本筋の神社なのかと争われている神社のこと。
両社とも同じ縁起を持っているので、今に至るまで結論は出ていません。
確実に「洲崎神社」という名前が出るのは江戸時代で、文化9年(1812)に房総を視察した筆頭老中松平定信が奉納した扁額が伝わっています。
また、江戸時代初期には現在の本殿が作られていたようなので、史実で遡れるのは江戸時代が限界のようです。
個人的には「洲崎神社」と「洲宮神社」は同一神社であった可能性が大きいように考えていますので、創建は奈良時代807年ではないかなと思っています。
御利益
洲崎神社の御祭神は女神様なので、とくに女性にご利益があるとされています。
また、海の近くにあることから海洋関係の方からの信仰も篤いです。
細かくまとめてみましたので、参考にしてください。
1、女性にとくにご利益あり
御祭神の天比理乃咩命(アマノヒリノメノミコト)は女神です。
芸道や結婚・恋愛、安産にご利益があります。
また安房神社の夫神と大変仲が良く、夫婦円満の神様でもあります。
2、海の守り神で、漁師さんやダイバーなど海関係に効果絶大
洲崎神社の立地が房総半島の東京湾に突出した部分にあることから、昔から海上交通を守る神様として信仰されていました。
今でこそ少なくなりましたが、昔は漁師さんなどの安全祈願を願った絵馬などがたくさんあったそうです。
また、現在は館山ダイビングスポットのすぐ近くにあることから、ダイバーもお参りにきます。
海洋関係の仕事やそれにちなんだ職業の方には大変ご利益のある神社です。
3、再び立ち上がる力をくれる
源頼朝がここで再起を願ってお参りしたことにちなんで、再び立ち上がる力をくれると言われています。
なにかに一度失敗しても、あきらめたくないもう一度チャレンジしたいと思っているひとはお参りに行ってみてくださいね。
OnePoint 富士山と夕日のパワーをもらおう!
パワースポットとして注目されている洲崎神社ですが、もう一つの顔もあります。
洲崎神社本殿から道を挟んで反対側海には鳥居があります。
「浜鳥居」といわれ、例祭などはここで神事が行われたりします。
この鳥居には富士山と夕日がすっぽり入るんです。
実は写真のスポットとしての方が昔から有名です。
富士山の力をもらえるところでもありますが、その夕日の美しさは一品です。
写真が趣味でない方も夕日と富士山と鳥居という組み合わせを見に足を運ばれてはどうでしょう。
まちこおすすめのスポットでもあります。
ちなみにここのすぐ近くにあるホテル洲の崎 風の抄からは、海と太陽のコントラストがとっても素敵。
ご飯もおいしい。
御朱印
以前は宮司さんの自宅で御朱印をもらえました。
が、諸事情でそれもできなくなってしまったそうです。
現在は山門(上写真の銅版の建物(鳥居の中の緑色の屋根の))の入って左側に御朱印ケースがありますので、そこから御朱印半紙をもらって自分で御朱印状に貼ってくださいね。
ちなみに行くなら断然お祭りの日がおすすめ。
なぜなら、その日はご利益倍増だから!
「論社」についての豆知識
洲宮神社
洲崎神社と洲宮神社
延喜式の式内社から見る「論社」という論争が江戸時代からあります。
なんか難しい文ですが、「論社」ってのは「同じ名前・同じ御祭神・同じような地区に同じ神社があるけどどっちが本筋なのよくかわからない」ことを論ずる神社のことをいいます。
基準になるのは「延喜式神名帳 式内社」で、平安時代中期に記されたいわば法律を補完するために出された細かい決まり事になります。
法律関係の書物のはずなのですが、なぜか神社も細かく載っています。
古来神社は神事などが行われる場所、つまり政治が行われる場所だったからです。
中央(昔は畿内)ですら、国家行事として重んじていたのだから地方になるとその神社の力はすごいものでした。
この式内社に名前が載ることは、神社にとって一種のステータスみたいなもので、こぞって論じられることになります。
とくに江戸時代に入ると。
「洲崎神社」も「洲宮神社」も、いずれも結論には至らずこっちじゃないかな~って感じでうやむやに現在に至っています。
縁起によれば1000年以上続いていることになっている両社。
何事もなく千年も続く神社ってのは稀かと思います。
神社内で喧嘩別れして分霊したり、地域の住民のお願いで移動したり、理由は色々あると思います。
通説としては、大体二社論社があると「本社」と「奥宮」としてあることが多いように感じられます。
もしかしたら式内社に列せられるくらいだから、遷宮とかやっていたかもしれません。
二か所あるってことは定期的に立て替えが行われていたのかも、そんな推測だって出来ます。
縁起も同じで御祭神も同じならば、それぞれ全く関係ない神社なわけはないはずで、しかも立地が近いのならば尚の事、どっちが本当でどっちが違うとか論争するのもまずおかしいかとまちこは考えます。
ちなみに明治時代に入ってからも「近代社格制度」という神社の格付けが改めて行われていますが、こちらは明治政府の思惑たっぷりのランク付けですので、歴史がどうとか全く関係ありません。
では「延喜式神名帳 式内社」は純然たる信仰のたまものなのかというと、そうでもありません。
これも平安時代の僧侶とか政治家とかの利害が色濃く見られ、すでに存在していたけれど記載がない「式外社(しきげしゃ)」なんてのもあります。
なんで載せてないのかって?
そりゃ、当時のお偉い方々に載せて欲しくない事情があったんです。
こんな風に社格なんてのは結構いい加減なもので、平安時代に書かれているからと安易な考えでくくると、本来の神社の形は見えなくなると思います。
ただし延喜式から見る社格からは、そこの神社が中央政府にとって重要な地であったという証になるので、中央とのつながりのある有力な神社であったのは間違いありません。
関連神社
安房神社
夫神の神社
洲崎神社の御祭神天比理乃咩命(アマノヒリノメノミコト)の旦那さんである天太玉命(アメノフトダマノミコト)の安房神社は、安房の国一の宮として全国区で有名です。
安房神社もまたパワースポットですので、興味のある方は下記から記事を読んでみて下さいね。
安房神社のことが詳しく知りたい方はこちらの記事へ
東京湾に広がる洲崎信仰
洲崎神社は東京湾の入り口にあたるところに立っていることから、東京湾沿岸の地域と密接な関係があります。
分霊・分社され、各地に神社があります。
- 品川神社(東京都品川区)
- 神田明神、摂社・八雲神社※ただし現在天比理乃咩命は祀られていない
- 洲崎大神(横浜市神奈川区青木町)
また同名の「洲崎神社」という名前の神社もあり、その関連性が指摘されています。
神田明神などと同じように室町時代の勧請された名残とも考えられます。
おもしろ分社
房総には日本で唯一の「海底神社」なるものがあります。
読んで字の如し、海の底にある神社。
館山市の波左間海中公園(はざまかいちゅうこうえん)海中に社殿と鳥居が鎮座します。
波佐間は館山のダイビングスポットで、ダイバーの海での安全をまもるために「洲崎神社(すのさきじんじゃ)」から分社してもらいました。
毎年初詣に来るダイバーさんもいるそうです。
まとめ
洲崎神社は意外に奥が深い神社です。
なんども参拝している神社ですが、こんな辺鄙な神社なのに誰かしら必ずいるパワースポットです。
とくに夏場などはとっても人が多いのにいつもびっくりします。
ただしちょっと覚悟が必要かもしれません。
洲崎神社は本殿が山の上にあります。
急こう配な階段を一生懸命のぼらねばなりません。
まちこは毎回ひーひーいって足がぷるぷるいってしまいます。
歳ですね~
でもそこから見える海がとてもきれいでいつも感動してしまいます。
洲崎神社の祭礼はこの階段と景色を活かした神事が特徴。
8月に行われますので、お祭りと併せて見に来てくださいね。
以上「おらがまち」まちこでした。